このDJ MIX徹底研究所では、中〜上級者向けにDJ MIXの音源を紹介しながら他のDJとは一味もふた味も差の付くDJ MIXの作り方を徹底的に解説していきます!
ただ「サビ→イントロ」とつなぐのではなく、MIXの流れや曲の展開に合ったベストのつなぎをレッスンします!
このレッスンのポイント!それは、、
『MIXのストーリー展開やその曲を収録した目的を元に、各つなぎの細部にこだわることで、MIX全体の完成度とメッセージ性を上げる』という手法です。
では、その考え方とテクニックを具体的にお話していきましょう。
今回はわたくしDJ KOMORIが制作した、ブルーノ・マーズのヒット曲「Finesse Remix feat. Cardi B」からインスパイアされた90’s R&BをテーマにしたMIX「Sweet Life Radio -Inspired by Finesse」
こちらのMIXの中から実際のツナギをピックアップしていきます!
ミックスのつなぎポイントを徹底解説
0:00~ INTRO
これは自分のmixcloudで展開している「Sweet Life Radio」というMIXシリーズのイントロを使っています。
「疑似ラジオ」をイメージしたMIXのシリーズなので、ラジオっぽい効果音や色んな曲のパーツを組み合わせて作りました。Youtubeで「Radio Jingle」などで検索するとお手本になるジングル(ラジオなどの場面転換で挿入される効果音)が色々と聴けると思います!そう、どんなことでもまずは検索です。笑
ちなみにイントロにある「Sweet Life Radio」というナレーションは、海外サイトに英文を打ち込むとそれを読み上げてくれるナレーションサイトがあるので、その音声をEQでラジオっぽくしたものです。
iSpeech https://www.ispeech.org/text.to.speech
日本語版もあります http://voicetext.jp/index.html
「KOMORI!!!」という声はRedfoo from LMFAOの自分のシングル曲のシャウトから使っています。
4:01~ Harold Travis – LA LA LA → Bobby Brown – Til The End Of Time
※時間指定の再生ができないので上記の時間から聴いてみてくださいm(_ _)m
これは「LA LA LA」のブレイクの間奏から次の曲のブレイクにつなぐという、ちょっと変わったMIXをしています。
このツナギで目指しているのは、「演奏しているフレーズ同士がつながって聴こえるようなMIX」で、4:16のところでECHOをかけて次の「Til The ~」のシンセフレーズが受け取るようにつないでいます。
R&Bなどメロディアスなジャンルを扱う時はこういうMIXが映えます!
ちなみにこのミックスは、曲のKEYを合わせた「ハーモニックMIX」です。というか僕のDJ MIXはほとんど全てのつなぎにおいてハーモニックMIXです。
「ハーモニックMIX」とは『ミックスする2つの曲のKEYを合わせて不協和音を出さないミックス』ですが、、これについてはまた別の特集を組みます!(そんなことばっかり言ってるけど・・更新頑張ります!笑)
14:14~ Bruno Mars – Finesse Remix feat. Cardi B → Ralph Tresvant – Money Can’t bu you love
このMIXの山場とも言える、13:58~「Finesse REMIX」のCardi Bの大サビパート。この「盛り上がりを途切れさせないようにテンションをキープ」して次の曲へ移ることを意識しています。
Cardi BのRAPが90’sなフロウを完全に意識しているので、「Money~」後半のRAPパートからイン。
このように曲の途中からつなぐMIXは、フェーダーを上げるタイミンが非常に重要です。
余計なフレーズが入らないよう、もしくはここでいう「LISTEN!」のようなきっかけとなるフレーズのアタマが途切れてしまわないように、何度も練習してみましょう!
こういう細かさがMIXのクオリティーの土台を作ります。
ここもKEYの合ってるハーモニックMIXです
17:29~ TLC – What about your friend → TLC – Hat 2 da back
同じTLC同士のMIXなので、ちょっと意表を突くタイミングで曲を変えています。タイミングが唐突な分、「What about~」のRAPフレーズの切れ目にキレイにECHOをかけてMIX上の違和感を極力消しています。
ちょっと変わったポイントでつなぐ場合は、それをフォローする繊細さも必要です。
現場でDJする時も、ただサビ終わり→イントロの繰り返しではなく、時には意外性のあるMIXは大切です。
10~20%くらいスパイスとなるような、うな重でいうとピリリと効く山椒のようなMIXですね。
19:10〜 MC Lyte – Ice Cream Dream → Janet feat. MC Lyte – You want this
この2曲はMC Lyteつながり。また両曲ともJam & Lewisという90年R&Bを象徴するプロデューサーによる楽曲です。
どちらの曲もサビの後のブレイクで入る派手なフレーズが似ていたので、そのポイントを重ねてつなぎました。
実際の「You Want This」の中では以下の3:36のところからMIXしています
You want this / Janet ft. MC Lyte
https://youtu.be/l4i7PrpFn_I?t=3m36s
このMC LYTEのフロウは、Cardi Bが「Finesse REMIX」でRAPする上では絶対というほど意識しているラッパーだと思います。そういった深読みのメッセージも潜ませてみました。
と、ここまで一つ一つのつなぎ方について紹介してみました。
「神は細部に宿る」
ちなみに・・このMIXの最後の最後、フェイドアウトする時のレコードのノイズが入っているがわかりますか?このノイズ、実は実際の楽曲と別で、アナログノイズを録音して後から重ねています。 自分のイメージを伝える、そういう細かな演出も大切です。
ここで紹介した以外にもたくさんのノウハウを一つのDJ MIXに詰め込んでいます。DJに限らずどんなジャンルのクリエイティブな表現でもそうだけど、細かいところにまで気を配ってこそ!長く聴いてもらえる「作品」を作ることができます。いい映画はエンドロールまで演出を用意しているでしょう?
「神は細部に宿る」とはドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉です。DJ MIXや楽曲制作もおなじです。
リスナー目線で「聴かせたい曲」を選ぼう!
と、ここまでツナギをメインに話したけど、選曲をする上で自分の中で大切にしているポイントを一つ。
「カッコよくつなげるけど、そこまで好きじゃない曲」と
「上手くつなげないけど、絶対に聴かせたい曲」で迷ったら、
後者の「聴かせたい曲」を選ぼう!ということ。
なぜなら、リスナーにとってカッコイイつなぎは数秒の出来事だけど、本当に聴かせたい曲は数分つづきます。DJ本位にならず、音楽のすばらしさを優先するという考えを土台にするべき・・・僕はそう思います。
ただ、本当にベストなのは例えつなぎにくい曲でも、『ベストのつなぎを考え出す』ことです。他人がやってないつなぎ方やMIXを、自分の知識とスキルと感性を総動員してクリエイトしましょう。他人が作ったルールをアップデートする、それがDJの醍醐味です!
ということで、みなさんがDJ MIXを作る上で参考になったでしょうか?
自分は20年間で何百というDJ MIXを制作&リリースしてきました。独自のノウハウが数え切れないほどあるので、このMIXFUN!ではそれを惜しむこと無く公開して行こうと思っています!